不動産証券化における投資家保護※1は、「投資家の自由な意思に従った投資判断を可能とする市場インフラを整備し、機能させること」であり、具体的には「(前略)・・・投資家が投資リスクを十分に認識した上で、自らの判断により投資できる環境を整備すること」と定義されている。
また、「投資家保護のもう一つの側面は、投資家が投資リスクに関して自己責任を負うこと」※1であって、「金融事業者は、顧客(投資家)との情報の非対称性があることを踏まえ、・・・(中略)・・・重要な情報を顧客(投資家)が理解できるよう分かりやすく提供すべきである」※2ことから、金融事業者には投資家の自己責任原則を支える情報開示が求められる。
投資法人は情報開示によって投資家と共有したフレームで資産を運用し、投資価値を実現しており、投資家は投資法人と共有したフレームで投資リスクを認識し、自己責任を負っている。
投資法人が投資リスクを認識するための判断材料を投資家に適切に開示していなければ、投資家は実際の運用とは異なる情報を見せられ、認識していない投資リスクを負うことになり、投資家の自己責任原則は崩れ、投資家保護は機能していないことになる。
特に、Jリートは証券化フレームによって利益相反リスクが存在しており、リートの資産運用がフレームから外れていれば、投資家は不測の損害を被ることになる。
ここでは、「投資家保護と利益相反」について整理する。
ケーススタディでは、投資法人の開示情報をもとに資産運用会社の運用について検証し、投資家に開示されている情報と実際の運用に”ずれ”がないか、フレームから外れた運用と投資家への影響についてみていく。
※1「不動産証券化ハンドブック2019」一般社団法人不動産証券化協会
※2「顧客本位の業務運営に関する原則」平成29年3月30日金融庁