投資判断に役立つ開示資料の読み方

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鑑定評価書の読み方

投信法201条1項※1によって、資産運用会社は、特定資産の取得が行われたときは、当該特定資産に係る不動産の鑑定評価を不動産鑑定士に行わせなければならないと定められている。
証券化不動産の鑑定評価は、投信法の要請により「投資家に開示されることを目的に、投資家保護の観点から対象不動産の収益力を適切に反映する収益価格に基づいた投資採算価値を求める」※2ものであり、「投資意思決定の妥当性や利害関係者間等の取引における利益相反の有無等を判定する有力な材料」※3となる。

不動産鑑定士は「投資家に開示される対象不動産の運用方法を所与とし」※2、投資法人が投資家と共有したフレームに基づいて鑑定評価を行うことで、投資法人・資産運用会社・投資家と同じリスク・リターンのフレームで実現される投資価値を求め、投資家の自己責任原則を中立的な立場から支える役割を担っている。
不動産鑑定士が投資法人と同じフレームで鑑定評価を行わなければ、投資家は実際の運用を所与としていない鑑定評価額(投資価値)を見せられ、投資リスクを認識することができず、投資家保護は機能していないことになる。
不動産鑑定士が「中長期的に安定的と認められる賃料収入」を想定して評価することは、実際の運用フレーム、契約フレームを所与とせずに賃料変動リスク・空室リスク等を除外して投資価値を求めるもので、投資家の判断の役に立たないどころか投資リスクを認識する上で誤った情報を与えるものである。

ここでは、「証券化不動産の鑑定評価」について整理する。

※1 投資信託及び投資法人に関する法律 201条1項(特定資産の価格等の調査)
※2「不動産鑑定評価基準」「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」国土交通省
※3「証券化対象不動産の鑑定評価に関する実務指針」公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会